2017-11-23

小柴胡湯③・成方切用・巻5上・和解門

默默不欲食。
黙黙として食を欲せず。


(邪在表则呻吟不安,在里则烦而闷乱,邪自表而方传里,故默默静也。
(邪が表に在らば則ち呻吟シンギン不安す,裏に在らば則ち煩して悶乱す,邪が表自カラして方カワは裏に伝はる,故に黙黙として静かなり。

《经》曰:阳入之阴则静。
《経》に曰く:陽之に入らば陰は則ち静なり。

邪在表则能食,入里则不能食。
邪が表に在らば則ち能く食らふ,裏に入らば則ち能く食らはず。

今在表里之间,故但不欲食,未至于不能食也。)
今は表裏の間に在り,故に但だ食を欲せず,未だ食を能はざるに至らざるなり。)

2017-08-13

大陥胸湯②成方切用・巻4上・攻下門

嘉言曰:太阳误下之脉,主病皆在阳,在表即有沉紧沉滑之殊,皆不得以里阴名之。
嘉言曰く:太陽誤下の脈,病を主るは皆な陽在り,表に在らば即ち沈緊沈滑の殊有り,皆な得られず裏陰を以て之を名づく。

《六书》云:胸膈满者,胸间气塞满闷也,非心下满。
《六書》に云ふ:胸膈満つる者は,胸間の気は満悶して塞ぐなり,心下満に非ず。

胁满者,胁肋胀满也,非腹中满。
脇満する者は,脇肋脹満するなり,腹中満に非ず。

盖表邪传里,必先胸,以至心腹入胃。
蓋し表邪が裏に伝はり,必ず胸を先にし,以て心腹に至り胃に入る。

是以胸满多带表证,宜微汗。
是れ胸満を以て多く表証を帯ぶ,宜しく微に汗すべし。

胁满多带半表半里,宜和解。
脇満は多く半表半裏を帯び,宜しく和解すべし。

胸中痰实者,宜涌之。
胸中に痰実する者は,宜しく之を涌ワくべし。

如结实燥渴便秘,宜以此汤下之。
如モし燥渇便秘を結実すれば,宜しく此の湯を以て之を下すべし。
2016-02-03

人参養栄湯


成方切用の訓読を続けているが、内容の方剤はどのように記載されているのか。基本は医方集解と同じである。人参養栄湯を調べる機会があったので調べてみた。参考に方剤学も引いた。

人参養栄湯《和剤局方》
【原文】治脾虚食少無味。身倦肌痩。肺虚色枯気短。毛髮脱落。小便赤渋。栄血不足。驚悸健忘。寝汗発熱。
【訓読】脾虚し食少なく味無く、身倦(つか)れ肌痩(や)せ、肺虚し色枯れ気短し、毛髮脱(ぬけ)落(お)ち、小便赤渋、栄血不足し、驚悸健忘、寝汗発熱するを治す。

【原文】経曰。脾気散精。上輸於肺。此地気上升也。肺主治節。通調水道。下輸膀胱。此天気下降也。脾肺虚。則上下不交而為否。営血無所藉以生。
【訓読】経に曰く。脾気が散精すれば、肺に上輸する。此れ地の気により上昇るなり。肺は節を治すを主(つかさど)る。水道を通調し、膀胱へ下輸する。此れ天の気が下降するなり。脾肺が虚すれば、則ち上下に交らわずして否めず。営血は藉る所無く以て生ずる。

【原文】諸種虚証。亦治発汗過多。身振脈揺。筋惕肉瞤。
【訓読】諸もろの種の虚証、亦た発汗過多、身振脈揺、筋惕肉瞤を治す。

【原文】汗為心液。汗即血也。発汗過多。則血液枯涸。筋肉無以栄養而然也。
【訓読】汗は心(しん)液(えき)たり。汗は即ち血なり。発汗過多なれば則ち血液は枯涸(こかつ)し、筋肉は栄養を以て無くして然(しか)るなり。

【原文】人参 白朮 白芍銭半 黄蓍密炙 当帰二銭 茯苓一銭 熟地三銭 甘草炙 陳皮 桂心 遠志五分 五味七銭 加姜棗煎。
【原文】熟地帰芍。養血之品。参蓍苓朮。甘草陳皮。補気之品。血不足而補其気。此陽生則陰長之義也。且参蓍五味。所以補肺。
【訓読】熟地、帰芍は養血の品。参蓍・苓朮、甘草・陳皮は補気の品。血不足にして其の気を補ふ。此れ陽を生ずれば則ち陰が長ずるの義なり。且つ参蓍・五味子はいわゆる肺を補ふ。

【原文】肺主気。能生血。
【訓読】肺は気を主(つかさ)る。能(よ)く血を生ずる。

【原文】甘陳苓朮。所以健脾。【訓読】脾は血を統(とう)す。  
【原文】熟地所以滋腎。【訓読】腎は精血を臓し相ひ生ずる。  
【原文】遠志能通腎気。上達於心。桂心導諸薬。入営生血。五臓交養互益。故能統治諸病。而其要則帰於養営也。
【訓読】甘陳苓朮はいわゆる健脾。  熟地はいゆる滋腎。  遠志は能く腎気を通じ、上は心に達し、桂心は諸薬を導き、営に入り血を生じ、五臓は養を交ひ互ひに益す。故に能く諸病を統り治し、而して其の要は則ち養営に帰すなり。

【原文】薛立齋曰。気血両虚而変現諸証。募能名状。勿論其病。勿論其脈。但用此湯。諸証悉退。此十全大補対子也。十全大補但分気血。此則五臓皆補。無乎不到。虚寒甚者。高氏常加附子以治之・三陰瘧更妙。
【訓読】薛立齋が曰く。気血両虚して諸証を変現し、募まりて能く状を名づく。其の病を論ずるなかれ。其の脈を論ずるなかれ。但だ此の湯を用ふれば、諸証は悉(ことごと)く退(しりぞ)く。此れ十全大補に対する子なり。十全大補は但だ気血を分つ。此れ則ち五臓を皆な補(おぎな)ふ。無き乎み到せず。虚寒の甚だしき者は、高氏は常に附子を加へ以てこれを治す。三陰の瘧(おこり)は更に妙なり。

参考)
気血両補
 気血両補は補気と補血の複方であり、気分と血分の両虚の証候を主治する。常用方剤は八珍湯である。

八珍湯《正体類要》
 【処方】当帰 川芎 白芍薬 熟地黄 人参 白朮 茯苓 甘草
 【効能】気血を補気する効能がある。
 【主治】失血過多の為、気血が両虚し、悪寒発熱、煩躁して渇する等の証を治する。
 【処方解説】本方は四物湯と四君子湯の複方である。陰陽気血は相互に助け合っている。失血過多は陰虚となり、陰虚すれば内熱を生じ、これによって煩燥して渇をなす。気血は営衛の源であり、気血が両虚すれば、営衛は失調して悪寒発熱する。本方の作用は気血両補であり、補血中に益気を兼ねるものである。それは、陽を生じて陰を長ずるの効能がある。臨床にては、脾胃欠損により、肌肉消痩し、或いは胎産崩漏で気血両虚による者に常用される。

 【附方】
十全大補湯《医学発明》八珍湯加黄蓍、肉桂。虚労喘嗽、遺精失血、婦女崩漏、月経不調等の証を治する。

人参養栄湯《和剤局方》十全大補湯去川芎、加五味子、遠志、陳皮、大棗、生姜を加えて煎服す。諸労虚損し、呼吸と少気し、心虚して驚悸し、咽乾唇燥等の証を治す。(方剤学)

2015-12-15

張志聡

 成方切用の方制総義に人名が出てきたので『史記』の列伝ではないが、解説をしておこう。

 張志聡(ちょうしそう1610-1682)は銭塘(せんとう)の人で、今の浙江省杭州にあたるから出た。字を隠庵と称した。張家は代代江南に居を構え、九代続いた開業医であった。幼くして父を失い、張卿子(ちょうけいし)に医学を学んだ。経典の研究に没頭した。

『素問』、『霊枢』、『傷寒論』、『神農本草経』を尊重し、陰陽論や五運六気説によって傷寒・本草を論ずべきと主張した。著書は『素問集注』、『霊枢集注』、『傷寒論集注』、『傷寒論宗印(そういん)』、『本草崇原(すうげん)』などがある。

 張志聡は、張卿子の門人で『傷寒論集注』を著した。同じ張卿子の門人で『傷寒論直解』を著した張錫駒がいて、二人は「銭塘二張」と称された。

 彼は40年間、景勝地、西湖のほとりで「侶山堂(りょうざんどう)」を開き、中医中薬の理論を究明し集団による成果をあげた先駆者となった。『傷寒論集注』、『霊枢集注』に成果が出ている。
 また『侶山堂類弁』は医論百余編を集めたもので、彼の経験を生かしている。この書物は類似のものを理論的に鑑別し「後学の規矩準縄となすに足る」(清代・王琦語)と評価された。この『侶山堂類弁』は『医林指月叢書(いりんしげつぎょうしょ)』の中に収録されている。規矩準縄とは、基準とすべき法度(ほうど)である。

師の張卿子(一五八九~一六六八)は、名を遂辰、号を相期といい、卿子は字である。江西の出身で祖父が農民だったので、みずから西農とも称した。父について銭塘(杭州)に移り住み、当時その地は患者に「張卿子巷」と呼ばれたという。現在の杭州市横河橋の東北、大学路の付近に相当するらしい。

著書『集注傷寒論』について
 本書一〇巻は、本来の『張卿子傷寒論』七巻と本質的な相違はない。著者の張卿子については多くの地方志に伝がある。

 こう調べて書いていると、張志聡が梁哲周師匠に思えてくる。鶏林東医学院を立ち上げたのも門下生と一緒に集団で漢方理論の道を究めようとした。ただ出来の悪い我々弟子たちは宿題を出されても続かず、俺は素人を集めて戦う高杉晋作かと言われたものだった。課せられた宿題は、漢方マニュアルを作ろう、また薬対の翻訳もやってそれも載せようと言っていた。

その関連で施今墨対薬を冒頭から翻訳していたのだが、すぐにくじけてしまった。現在は別の方が和文翻訳本を出している。余計なことを書いた。
2015-10-17

槐角丸

 痔の出血が止まらないと患者がやってきた。証は乙字湯ではなく疼痛もあり、前々から使いたかった槐角丸を分包して試すことにした。約1時間半ほど問診をし、3日分を販売した。

復習として槐角丸の載っている医方集解、成方切用、方剤学などを読んだ。以下にまとめを載せる。

槐角丸《丹渓心法》
 槐角、防風、地楡、当帰、枳穀、黄芩
 一切の痔疾、腸風下血、脱肛を治す。

 元の方剤は槐花散《本事方》より附方として記されている。また医方集解や成方切用にも槐花散の加減方として載っている。

槐花散は、腸風、臓毒、下血を治す。槐花・側柏葉・枳穀・荊芥より構成される。側柏葉は養陰、燥湿、清血し、槐花は疏肝、泻熱、大腸を凉熱する。荊芥は散瘀、捜風し風病・血病の要薬となる。枳穀は腸を緩め利気する。

本方より柏葉、荊芥を去り当帰、黄芩、防風、地楡を加え槐角丸とする。治は同じであり涼血、疏風となる。

 方剤学では、理血剤の止血に分類される。理血剤は桂枝茯苓丸や温経湯、血府逐瘀湯などの活血袪瘀と本方の所属する止血に分かれる。止血では本方の他、膠艾湯や黄土湯がある。

本方、槐花散は、腸風下血を治し、出血は鮮紅色である。繰り返しになるが、方中の槐花は湿熱を消除し、血熱を清して止血を兼ねる。柏葉は涼血止血し、荊芥は理気疏風する。枳穀は利気寛腸の作用を有する。

槐花が君薬、柏葉・荊芥が臣薬、枳穀が佐使薬となる。原典では腸風臓毒を主治とし、下血の色が鮮やかなものを腸風といい、紫暗色のものを臓毒と言っている。よって長期にわたる下血は気虚陰虚があるので本方は適さない。别に治法を立てるべきである。

 さて、槐角丸では槐花の代わりに槐角を用い、地楡を加入している。地楡は清腸斂血作用があり、また清熱涼血作用もある。黄芩と組み合わせて清熱止血を増強する。

柏葉、荊芥を去るのは袪風を弱め、補血として当帰を加え、下血の清熱増強に黄芩を用い、燥性が強くなってしまうのを防ぐため防風を使う。また大多数の風湿薬は燥性があるが、防風は潤性があるからである。

槐花を使わず槐角を用いるのは、下降作用を期待するからである。当然槐角は妊婦禁忌である。

槐角丸が手元に無い場合、止血として田三七人参を乙字湯に加味して応急手当をするのもいいかも知れない。痔出血に試したことはないが刃物傷の大量出血がすぐに止まるので行けるであろう。
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SEIROU

Author:SEIROU
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昭和26年生まれの卯年。几帳面でだらしのないA型人間。アマチュア無線3級のラジオ老年だった。漢方家。薬剤師。2女1男の子供と4人の孫を持つ。自分の兄弟も同じ姉2人と俺の3人兄弟。
最近両親を亡くし長老になってしまった。
E-mail oosoneseirou@gmail.com

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