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2015-02-28

秦伯未の金匱要略簡釈

 しばらく秦伯未の著書を読むのをサボっていた。秦伯未先生の本は色々ある。まだ講義集である謙斎医学講稿が最後まで読破できていないが、飽きっぽいので别のものに着手しよう。

なるべく短く実用的なものがいいと、選んだのが金匱要略簡釈だ。正式には金匱要略雑病浅説なのだが、これだけの編を単行本としたものは金匱要略簡釈となっている。

内容はまったく同じで、病気別に1痉病から38婦科疾病まで収載されている。面白いことに、外科と傷科に分かれている。どう違うんだと疑問に思う。

見てみると、傷科は文字のごとく刀や斧などの傷と金瘡(金創)などである。金瘡とは切り傷のことで、化膿し潰瘍となったものも含む。王不留行散を使うと書かれている。王不留行はドウカンソウ(道灌草)のことで留行子、王不留ともいう。

性味は苦平または辛平、甘平である。効能は活血通経、下乳の作用があり、主治は通経、経閉、また乳汁不下、乳癰などに用いる。ただ王不留行はよく活血通経するものの、走而不守(走って守らず)であり、妊婦には用いてはいけない。《本草経疏》

 外科は、刀や斧などの外証を治すものとしていた。外瘍の生成によって化膿したものなどを指す。腸癰は内癰の一種で、浸淫瘍は皮膚病の一種である。このように疽、痱、痤、大疔などの潰瘍や化膿性疾患を言うようだ。

化膿から行くと傷科と外科とは共通するので、後世に一緒に論じるようになった。最初の原因が、戦乱によって刀斧傷が多かったので别に傷科と立てたのであろう。

興味のあるこれら外科、傷科は後の35、36にある。最後の37、38は婦科である。まずは最初の痉病を読んでみた。簡体字原文、翻訳の順に記した。
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        一、痉  病
1、痙病

痉原文作痓,痓音翅,据《广雅》注,是恶的意思,和本症不符合。
痙は原文では痓に作る。痓は音は翅であり、《広雅》の注によると、是れは悪という意味、本症と符合しない。

《巢氏病源》和《千金方》都作痉,后来也有好多人疑痓是痉字传写错误,本人亦同意改为痉字,以归一致。
《巣氏病源》と《千金方》はすべて痙に作る、それ以来から多くの人は、痓は痙の字が錯誤して伝わると疑って、本人もまた痙の字に変えるのに賛成して、もって一致に帰す。

痉是一种症状,主要现象为不柔和的背强反张,在《内经》上早有记载。
痙とは是れ1種の症状であり、主要な現象は柔軟でない背強反張で、早い時期の《内経》に記録がある。

如说:“诸痉项强,皆属于湿”、”诸暴强直,皆属于风”和“风痉身反折、先取足太阳”等,不仅说明了痉病的症状和原因,还指出了治疗途径。
もし言うならば:“諸痙の項強は、全て湿に属する””諸もろの暴強直は全て風に属する”それと、“風が痙攣して身が反折すれば、先ず足太陽を取る”など、痙病の症状と原因を説明しただけではなくて、また治癒の道を指摘した。

《金匮》(即《金匮要略》,下同)依据《内经》的理论,定出方药,并补充病因和预后,没有异样。
《金匱》(すなわち《金匱要略》、以下同じ)は《内経》の理論に根拠し、方薬を出し、そして病因と予後を補充し、様子が変わることはない。

兹将原文13条试作如下的分析:
ここに原文13条を次の通りに分析を行い試みる:

【原因】“太阳病发汗太多,因致痉。”
【原因】“太陽病の発汗が多すぎて、痙に因る。”

”夫风病下之则痉,复发汗必拘急。”
”それ風病下では痙であり、もう1度発汗すれば必ず拘急する。”

”疮家虽身疼痛,不可发汗,汗出则痉。”
”瘡家にてからだの疼痛するも、発汗させてはいけない、汗出は痙となる。”

【脉证】 “病者,身热足寒,颈项强急,恶寒时头热、面赤、目赤,独头动摇,卒口噤,背反张者,痉病也。……”
【脈証】“病む者は、身熱足寒、頸項強急、悪寒時に頭熱、面赤、目赤、頭だけの動揺、にわかな口禁、背反張する者は、痙病なり。……”

“夫疮脉按之紧如弦直,上下行。”
“そもそも瘡の脈はこれを按じて緊、弦のようにまっすぐにして、上下行する。”

【治疗】 “太阳病发热无汗,反恶寒者,名曰刚痉。”
【治療】“太陽病発熱無汗、反って悪寒する者、名づけて剛痙と曰く。”

“太阳病无汗而小便反少,气上冲胸,口噤不得语,欲作刚痉,葛根汤主之。”
“太陽病無汗して小便反って少なく、気上って胸に衝き、口禁し語るを得ず、剛痙を作さんと欲す、葛根湯もて之を主る。”

“太阳病发热汗出,而不恶寒者,名曰柔痉。”
“太陽病発熱汗出、不悪寒者、名づけて柔痙と曰く。”

“太阳病其证备,身体强,几几然(几音如,小鸟学飞貌),脉反沉迟,此为痉,栝蒌桂枝汤主之。”
“太陽病その証備わり、身体強く、数数然とし(いくつの音例えば、小鳥が飛ぶ容貌を学んでいるよう)、脈は反対に重くて遅く、これを痙となし、瓜?桂枝湯之を主る。”

“痉为病,胸满口噤,卧不着席(形容角弓反张),脚挛急,必齘(咬牙切磋有声),可与大承气汤。”
“痙の病たる、胸満口禁、横になることができないで席に着けず(角弓反張を形容する)脚攣急し、必ず齘(咬牙切磋に声有り)(はぎしり)、大承気湯を与ふべし。

【预后】“太阳病发热,脉沉而细者,名曰痉,为难治。”
【予後】“太陽病の発熱、脈沈細な者、名づけて痙と曰く、治し難しとなす。”

”暴腹胀大者为欲解,脉如故(指浮缓),反伏弦者痉。”
”暴に腹張大なる者は解すと欲し、脈故の如し(浮緩を指す)、反って伏弦の者は痙なり。”

“痉病有灸疮(因火灸而发生的疮,叫做灸疮),难治。”
“痙病に灸瘡(火灸して発生の瘡、灸の瘡という)あり、治し難し。”

从以上情况,可以明显地看出痉病的主要脉证。
以上の状況から、痙病の主要な脈証を見抜くことができる。

在此脉证上兼太阳伤寒症的用葛根汤,兼中风症的用栝蒌桂枝汤,兼阳明实症的用大承气汤。
ここで脈証は太陽傷寒証の葛根湯を用いる上、中風症用の瓜樓桂枝湯を兼ね、陽明実証病用の大承気湯を兼ねる。

不仅层次井然,而且与“伤寒论”的辨证论治基本相同。
段階だけではないが整然としていて、その上、“傷寒論”の弁証論治が基本と同様だ。

接着,把临症所接触到的病因和预后朴实写出,理由也是一贯相承的。
引き続いて、臨床に接触前に病因と予後まで質素に書き出して、理由も一貫して互いに被っている。

痉症发生,都属热性病范围,故《金匮》的三个方剂,都以退热为原则。
痙症の発生は、すべて熱性病の範囲に属し、故に《金匱》の三つの方剤は、すべて退熱を原則にしている。

热性病何以会造成痉症?
熱性病がどうして痙症をもたらすのであろうか?

因高热使津血枯燥,不能营养筋脉,即破坏“精则养神,柔则养筋”的生理所造成的病变。
高熱によって津血枯燥し、筋脈を栄養できず、つまり“精すれば神を養い、柔すれば筋を養う”の生理のもたらした病変の破壊である。

故仲景用葛根和栝蒌取其生津,危急时用大承气汤取其急下存阴。
故に仲景の用いる葛根と瓜樓は生津を取って、緊急の時に大承気湯を用いて急ぎ下し存陰をする。

后世医书在这基础上发挥的,如《三因方》上说:“原其所因,多由亡血,筋失所荣,故邪得袭之”。
後世に医学書はこの基礎上で発揮し、たとえば《三因方》上には:“もとその因る所、多く亡血の由に、筋は栄する所を失い、故に邪は之に襲わる”と。

《景岳全书》上说:“筋脉拘急故反张,血液枯燥故筋挛”。
《景岳全書》では:“筋脈、拘急するが故に反張し、血液枯燥するが故に筋攣す”と。

从而逐渐转向清热养阴一途,成为治痉的常法。
それによって次第に清熱養陰一途になり、痙を治療のする常法になる。

特别是在温热病多防痉厥,治痉之方亦最多。
特に温熱病の多く痙厥を防いで、痙を治す方もまた最も多い。

《温病条辨》的二甲复脉汤(生地、白芍、麦冬、阿胶、麻仁、炙甘草、牡蛎、鳖甲)、三甲复脉汤(二甲复脉汤加龟甲)、小定风珠(鸡子黄、阿胶、龟甲、童便、淡菜)和大定风珠(白芍、阿胶、龟甲、生地、麻仁、五味子、牡蛎、麦冬、炙甘草、鸡子黄、鳖甲)等,都为高热伤阴成痉而设。
《温病条辨》の二甲復脈湯(生地、白芍、麦冬、阿膠、麻仁、炙甘草、牡蠣、鼈甲)、三甲復脈湯(二甲復脈湯に亀甲を加える)、小定風珠(鶏子黄、阿膠、亀甲、童便、淡菜)と大定風珠(白芍、阿膠、亀甲、生地、麻仁、五味子、牡蠣、麦冬、炙甘草、鶏子黄、鼈甲)など、すべて高熱の傷陰が痙を成るために設けている。

当然,痉病有外感症状,还是要给予透泄机会,兼有神识昏迷的,并宜加入芳香开窍。
もちろん、痙病は外感の症状があって、やはりきわめて機会が出るのを与え、兼ねて神識昏迷を、そして、芳香開竅に加入すべきである。

《温病条辨》在“解儿难”里又说:“风温痉宜用辛凉正法,轻者用辛凉轻剂,重者用辛凉重剂,如银翘散、白虎汤之类。
《温病条辨》にある“解児難”の中でまた言う:“風温痙は辛涼の正法を用い、軽い者は辛涼の軽剤を用い、重い者は辛涼の重剤を用い、例えば銀翹散、白虎湯類を。

伤津液者加甘凉,如银翘(散)加生地、麦冬,玉女煎,以白虎合冬、地之类。
津液を傷る者に甘凉を加え、例えば銀翹(散)に生地、麦冬を加え、玉女煎、白虎の合冬、地の類を。

神昏谵语兼用芳香以开膻中,如清宫汤、牛黄丸、紫雪丹之类。
神昏の譫語は芳香を兼用し膻中を開く、例えば清宮湯、牛黄丸、紫雪丹の類である。

”可以意味着古今方剂虽有改变,而用药的法则还出一辙。
”古今処方の変化があることを意味することができ、用薬の法則はまた一つの方法を出す。

本人对于《金匮》痉病方,除葛根汤在外感症项背强痛和头痛较剧的使用有效,并有时在一般疏风剂内加入葛根亦能取效外,其他缺乏经验。
本人は《金匱》痙病方について、葛根湯を除き外感証の項背強痛と激しい頭痛の使用に有効であり、そして、時には普通の疏風剤が葛根に加入しても効果を取ることができるのをいれる以外に、その他は経験が足りない。

但从《金匮》上认识到痉病的成因有两种:一种是六淫侵袭化燥化风,即《金匮》所立的治法;一种是由其他疾病使津血枯燥所造成,即《金匮》所指的各项坏症。
しかし、《金匱》から痙病の成因が2種類あることが解る:1種は六淫に侵され燥に化し風に化し、すなわち《金匱》の立てた治法;一種のその他の疾病である津血枯燥によってもたらして、すなわち《金匱》指す各項の壊証である。

后者的痉病不能和外感痉病相提并论,尤其后人所说痉厥多属于后者的病变,故极少用辛温的麻桂剂。
後者の痙病は外感痙病と同列に論じることができず、特に後の人は痙厥して多く後者の病変に属するかと言って、故にきわめて少ない辛温の麻桂剤を用いる。

张介宾曾说:”中风之痉,必年力衰残,阴之败也;产妇之痉,必去血过多,冲任竭也;溃疡之痉,必血随脓化,营气涸也;小儿之痉,或风热伤阴为急惊,或吐泻亡阴为慢惊,此虽不因误治,而总属附虚之症”,都是指后者一类。
張介賓のかつての説:”中風の痙は、必ず年力が衰へ残り、陰が敗する;産婦の痙は、必ず血が去るのが多すぎ、衝任尽きる;潰瘍の痙は、必ず血は膿化に従い、営気乾くなり;小児の痙は、あるいは、風熱傷陰は急驚となり、あるいは、吐瀉の亡陰は慢驚で、これは誤治によるものでなく、いつも附虚の証に属する”,すべて是れらは後者の1種類である。

可知《金匮》方并不概括一切痉病,必须审证求因,适当使用。
《金匱》の方では、決してすべての痙病をまとめないで、必ず証を取り審らかにすべきで、適切に使うことを知るべきである。

同时体会到《金匮》所说痉病是疾病过程中的一个症候,凡看到背强反张,口噤不开,都当作痉。
同時に《金匱》が痙病の疾病過程で1つの症状を言ったのを体得して、一般に背強反張を見て、口噤し開かず、すべて痙に作るべきである。

所以有人附会某症是西医的脑脊髓膜炎,某症是恶性脑脊髓膜炎,也有拘泥疮家二字就当作是破伤风症,从而认为破伤风症非葛根汤所能治,脑脊髓膜炎的实症可用承气汤一下而愈。
だから、ある症状の西医髄膜炎をこじつける人がいて、ある症状の悪性髄膜炎、瘡家の2字にこだわって破傷風の病気と見なすもあって、それによって、破傷風病気の葛根湯に非ざる所と治療することができると思い、髄膜炎の実証にちょっと承気湯を用いて治る。

我以为中医治病,还是应该从中医理论实际出发,目前不必勉强结合。
私は中医の治病は、やはり中医理論から実際に出発するべきで、現在必ずしもいやいやながら結合をする必要はない。

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今回、翻訳も載せたので長くなってしまった。
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SEIROU

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昭和26年生まれの卯年。几帳面でだらしのないA型人間。アマチュア無線3級のラジオ老年だった。漢方家。薬剤師。2女1男の子供と4人の孫を持つ。自分の兄弟も同じ姉2人と俺の3人兄弟。
最近両親を亡くし長老になってしまった。
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